【書評】定刻の死に立ち会うということ
オウムの死刑執行のニュースから教誨室というものがあることを知りました。
執行の直前に宗教的な諭しを受ける場所とのこと。
そもそもこの「教誨」という言葉を知らず、たどり着いたのがこの本。
一日で一気に読み終わってしまいました。
教誨というのは執行の直前だけでなく拘置中から定期的に受けられること、
社会や他者との接点が絶たれた受刑者には
非常に限られた人との交流の場であることが分かりました。
死刑への賛否は被害者や受刑者の目線で語られることが多いですが、
執行に関わる人の事を知り、単純な報復感情だけでは賛成できなくなりました。
受刑者を刑場まで連行したり、手錠をしたり、頭に袋をかぶせる人がいること。
首に縄を掛ける人がいること。
床を抜く3つのボタンを押す3人の人がいること。
本にもある通り、彼らは「国が命じた人殺し」が仕事です。
本書からは宗教者である教誨師ももちろんですが、
刑務官も心を疲弊させていることが伝わってきます。
軟弱者の私には到底勤まりそうにありません。
彼らが国民の代表としてお勤めを全うして頂いていることに
改めて感謝と尊敬の念を懐きました。